【移住者が語る八尾】玉生さんの場合 八尾の人々とのつながり・距離感

移住者の言葉から八尾の魅力を再発見するシリーズ(1)

───県内外から八尾に移住してきた4人の女性が、八尾の暮らしの魅力や聞きたいけどなかなか聞けない本当のところをざっくばらんに語るシリーズ。八尾に住んだきっかけやまちになじんでいったプロセスを振り返りながら、八尾の魅力を改めて再発見してみたいと思います。
【対談者】以下の4名の方々で話した内容を複数回に分けてご紹介いたします。
・玉生安津子さん(富山県氷見市出身/2000年に八尾に移住)
・吉田祐子さん(愛知県名古屋市出身/2016年に八尾に移住)
・名田谷さやかさん(東京都杉並区出身/2016年に八尾に移住)
・原井紗友里さん(富山県富山市出身/2016年に八尾に移住)
大学在学中、広島の研究所でご主人と出会った安津子さん

八尾にきたきっかけ(玉生さんの場合)

玉生:富山県氷見市出身です。15歳で実家を出て寮のある高専で学び、卒業後は広島大学に進学しました。この大学のある東広島市って、地酒が有名なところ。大学の近くに国税庁の醸造研究所(現在:独立行政法人酒類総合研究所)があって、大学院の2年間はその中にある機関で、清酒の酵母の遺伝子解析の研究をしていました。
原井:えっ!安津子さんって理系なんですね!!
玉生:そこで出会ったのが、今の夫です。家業(玉旭酒造)を継ぐため、研究所に研修に来ていた彼と、偶然知り合いました。広島で出会う数少ない富山県民でしたから、一気に距離が縮まって、いつの間にかお付き合いをするようになり、大学院卒業の年に、結婚・出産し、夫と一緒に八尾にやってきました。
一同:そうだったんだ〜!!!
吉田:今の酒造会社の女将さんが、まさに天職ですよね。完全になじんでるから、どっちの実家なのかわからなかったくらい。 私は、安津子さんのこと、ずーっと八尾の人だと思ってた。
玉生:そう、夫にも言われます(笑)。 俺よりも八尾の人を知っている、俺よりもまちのこと知ってるって。 結婚するのが決まって初めて彼の実家に来た時は、酒蔵に嫁に来るっていう意味はあまりよくわかっていなくて、「ここに住むんだ」くらいに思っていました。
吉田:この地域にすっとなじめましたか?
玉生:23~4歳で若かったし、小さい子どももいたので、あっという間に10年くらい経ってしまった印象です。当時は主人の義祖母と同居しており、いろいろ教えてもらっているうちに、気が付いたら時が経っていました。八尾に来て今年で21年になりますが、前半10年は正直、あまり覚えていませんね。
でも、八尾の人たちがすごくあたたかかったエピソードをいくつか覚えています。

八尾の人たちのあたたかさにふれたエピソード

──七夕にみかん 〜いろいろくれる、八尾の人

玉生:七夕の頃。祖母と私が、まだ小さくて字をかけない子どもに代わって、短冊にいろんなお願いごとを書いて、軒先の笹に下げていたんです。上の子はみかんが大好きだったので「いっぱいみかんが食べたい」とか、たわいのないことを書いていました。それを近所の方が目にしたようで、七夕の時期なのに「みかん好きなのね~」って、みかんをどっさりいただいたことがありました(笑)。
一同:え〜!すてき!!!
玉生:ご近所さんの優しさにふれて、あたたかい気持ちになりました。驚きつつも心から感謝を伝えた後、祖母と「・・・何か他のものも書けばよかったかね」って、こそっと笑い合っていたのを思い出します。
───安津子さんやお子さんのことを、かなり気にかけてくれていたご近所さん。喜ばせてあげたいと、季節はずれのみかんを探して届けてくれた、心あたたまるエピソードですね。
吉田:確かに、近所を歩いていて子どもが「ああ、あれいいなぁ。欲しいなぁ」とか呟いたら、そのままくれちゃいそうな勢いのおばあちゃんたちとかいますもん(笑)。子どもや私にも気遣って優しくしてくれる人たちがたくさんいますよね。
名田谷:そういえば、八尾に来てからいろんなものをいただきます。玄関前に季節のものがどんっと置いてある(笑)。八尾に来て改めて美味しいなと思ったのは、春の山菜。本当に絶品です!
玉生:すすたけ、わらび、よしな、たらのめ…山菜が歩いてくるみたい(笑)。特に名前を貼って置いて行ってくれるわけじゃないから、多分あの方だろうという顔が何人か浮かびます。
吉田:秋はキノコが美味しいですよね! 採れたての藻がついたままの天然まいたけが、無造作にビニール袋に入れて置かれていたこともあります。春先のホタルイカをおすそ分けされたこともあります。最初は食べ方を知らないものも少なくありませんでしたが、こうやって季節の味を楽しませてもらっていることに感謝ですね。
原井:私は、花をたくさんもらいましたね。これは「紫式部っていう花だよ」とか言って、名前も教えてくださって。季節ごとに花を上手に飾る文化レベルの高さが衝撃だったし、ものとしてだけでなくそういう姿勢や考え方もおすそ分けしてもらっているようで嬉しかったです。

──靴下 〜ご近所さんたちの距離の近さ

玉生:心あたたまる話はまだありますよ(笑)。
───そうでした。安津子さんが八尾に来たばかりの頃のエピソードを聞いているんでした。
玉生:まだ小さかった子どもを抱っこしてる時、どうやら靴下を片方だけ落としちゃったみたいなんです。私は気づかずに過ごしていたんですが、「この辺でこんな小さい靴下を履いてる子どもは、あそこん家しかない!」って、ご近所の方が靴下を届けてくれたこともありました。
吉田:町の人たち、子どもたちにほんとうにやさしいですよね。地域ぐるみで大事にしてくれる町ですよね。
玉生:そう、やさしいんですよ。そしてよく見ています。それで思い出しましたけど、下の子がすごいやんちゃをしたので、叱って家に入れなかったことがあったんです。家から出して鍵をかけて知らん顔をしてたら、ご近所さんが「ごめん……叱るところも一部始終見とったから気持ちはわかるんやけど、もう可愛そうで見とれんから…入れてあげて…。許してあげて…」って言われて(笑)。
一同:(笑)
玉生:きゃ〜!恥ずかしい!って思いました。子どもには「もう家に入れてあげるから、近所のおばちゃんにありがとうって言いなさい」って(笑)。
吉田:私もそういうの見ちゃうと、何かしたくなっちゃいます。自分の家に入れるわけにもいかないし、このまま見て見ぬ振りもできないし…って思って、お菓子をあげて「がんばってね」ってやったことあります(笑)。
───すでに八尾町民のしぐさですね…。
玉生:そういえば、高校生だった娘の友達がおわらを見に来た時に、娘が近所の人とめちゃくちゃ仲のよい様子を見て驚いていました。その子は富山市のまちなかに住んでいて、隣の家の人としゃべったことがないって言っていました。
原井:現代はそれが普通かもしれません。この八尾の距離感が、もしかしたら、プライバシーを守りたい人とか、コミュニケーションが苦手だと思っている人には嫌がられるかもしれないけれど…。
玉生:これだけ近い関係であることを最初から知ってる人ってどのくらいいるのかわからないけど、こういう関係が楽しい!と思える人にとってはすごくいいまちだと思います。
名田谷:私は最初からこんな風にご近所さんとの距離が近いところだとは思っていなかったほうです。でも、入り込んでみると、これが結構心地よくて、今は好きだなと思えます。
───周りの目を意識するのが苦手という人はちょっと辛いかも知れませんが、みんなが見ていてくれるという安心感がありますね。

──ありがとうアルバム 〜イチからの人間関係づくり

玉生:最後にもうひとつエピソードを。お嫁に来た最初の年に、まちの婦人会の方たちがアルバムを持ってきてくれたんです。「来てくれてありがとう」って。この通りに若いお嫁さんが来るのは久しぶりだから、ありがとうって言われて。
───地域の方々がすごく大事に思ってくださっているのが伝わってきますね。
吉田:そういえば、引っ越してきたばかりの頃から、「〇〇さんのお嫁さん」とか「〇〇ちゃんのお母さん」じゃなくて、下の名前で呼んでくださったのが印象的でした。私の名前も子どもの名前もすぐ覚えてくださって。都会に住んでいるとそういうことってあまりないから、その自然で飾らない感じで、すーっと仲間として認めてもらったような嬉しさがありましたね。
名田谷:以前は、富山市のまちなかで、アパート暮らしをしていたんですが、子どもが泣いたら近所迷惑だろうな~って気にして、「お父さんまだかな〜」なんて言いながら家の周りをとぼとぼ散歩してたなぁ…って思い出しました。お隣の生活の音もこちらの子どもを叱る声も、お互いに聞こえながら暮らしている今の環境とは全然違いますね。
原井:八尾は、家族で移り住むのに向いている地域だと思います。さやかさんのように全く八尾に縁がない人たちでも、家族単位で来てしまえば孤立しない。子どもを介してつながる関係がたくさんありますしね。
名田谷:八尾で小さな子を連れて街を散歩してたら、絶対誰かが声をかけてくれる。私自身、そういう親子連れを見かけたら、泣いてる子どもに「あらどうしたの?泣いてたの?」っていう風に話かけちゃいます。
───吉田さん同様、移住5年で、八尾町民のしぐさが出ちゃうんですね…。
名田谷:今の子どもたちは、学年を超えて近所の子たちと遊び、地域の大人たちに声をかけてもらいながら育ててもらっていますが、もっと子どもが小さい頃にこの八尾で子育てできたら、さぞかしよかっただろうなと、つい想像してしまいますね。車通りも少ないし、雪かきも助けてもらって、本当にあたたかい町だなと思います。
玉生:うちの子どもたちは、だいぶ八尾の人々に育ててもらいました。
名田谷:アパートにいた頃より、家族の中で地域のことが話題に出ますよね。「今日は○○さんにこんなことしてもらった」とかって、それぞれが報告しあうような感じで。
原井:私たちのように外から来ると、親どうしが同級生だったりするような濃いネットワークはないし、昔から八尾に住んでいる人たち特有の地元トークはできないけれど、少しずついろんな人とのつながりができてくるんですよね。
玉生:そういう濃い関係がないのが、逆にいい時もあります。よそ者だからこそ、打ち明けられたり意見を聞かれたりすることもありますからね。
吉田:無理やり仲のいい友達を作らなきゃと思わずに、近所の人の顔を見たら挨拶してちょっとしゃべるところからでいいんじゃないでしょうか。確かに、「誰かに見られている」感覚はありますが、そこまで負担には感じない。自分の家族さえよければいいという暮らし方ではないけれど、地域の人を気遣いながら生きるのは、けっこう心地よいものです。
───気遣うというと悪い言葉と捉えられることもありますが、人と人との心地よい距離感とか、美しい・嬉しいと思うものを誰かと共有しようとすることって、やっぱり気遣いなんですよね。そういう意味で、外から来た人を受け入れるあたたかさと慎みが、八尾の人にはあるのだと思います。
(玉生さんの移住のきっかけから、八尾の人々のコミュニケーションやつながり方について話の及んだ今回。次回は、名田谷さんのお話から、八尾ならではの魅力(や苦労)について語っていただきたいと思います。みなさん、どうもありがとうございました)
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